インサイダー取引2006年07月27日 08:28

 昨日、日経新聞の広告局員がインサイダー取引の容疑で逮捕された。
 インサイダー取引とは上場会社および店頭登録会社の役職員や大株主等の「会社関係者」で、その職務等に関し「重要事実」を知った者、または会社関係者から「重要事実」の伝達を受けた「情報受領者」が、「重要事実」の「公表」前に当該上場会社等の株券等の売買等を行うこと。
 この内「重要事実」としては「会社合併・買収」「業務提携」「株式分割」「新株予約権発行」「業績の上方修正・下方修正」「新技術・新製品の開発」「新事業の立ち上げ」「配当の増加」「破産申し立て」などが含まれる。「公表」とは、一般紙、通信社、放送局など2以上のマスコミに対して情報を公開後12時間以上経過したことをいう。
 インサイダー取引の処罰としては「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(証券取引法198条18号)。」「法人に対して3億円以下の罰金刑(同207条1項2号)。」「売却代金のすべてを没収・追徴(同198条の2第1項2号)。」の三号があり、それぞれが単独か組合せで適応される。
 最近、個人ベースの「小粒インサイダー事件」が増加傾向にある。そこで金融庁などは不正利得の額が小さく、悪質性も低い案件については、事実を認めて不正利得を返還すれば刑事罰を適用しない「課徴金制度」を昨年4月に導入し、すでに10件以上の案件を処理している。
 これに対して、今回の事件は5回にわたって繰り返されており、額も3000万円と高額のため悪質とされ、刑事罰は免れそうにない。
 同じく村上ファンド事件のような大型のインサイダー事件の場合も、有罪となれば課徴金だけでは済まない。個人に対しては、懲役3年以下または罰金300万円以下の刑罰が課せられるうえ、不正に得た利益は没収される。ただ、有罪でも執行猶予となる例が多い。
 これでは「刑罰が軽すぎる」との批判もあり、6月4日に一部施行された金融商品取引法では、インサイダー取引の個人への刑罰が懲役5年以下、または罰金500万円以下へ引き上げられた。
 ただ、不正利益の没収という点で、村上ファンド事件の場合は大きな問題があるといわれている。同ファンドがニッポン放送株に関連して得た不正利益は30億円程度とみられているが、これは村上被告本人の資金ではなく、投資家から集めた資金によるものだ。
 投資家は、まさかインサイダー取引をするなど思ってもいなかったわけだから、ファンドによる利益を没収するのかどうか、今後の司法判断に注目が集まっている。
 今回の事件は、単独犯の様なので、3000万円は没収の上、執行猶予つきながら懲役3年以下の刑になるのではないだろうか?
 今回の容疑者は犯行をゲーム感覚で行ったといっているが、新聞社は懲戒解雇となりさらに刑罰を受ける可能性も高い。本人にとって全てはうたかたの夢となり後悔しても後の祭りであろう。しかも悪夢となって続くかもしれない。