パンは大丈夫か?2006年07月20日 17:09

 最近、日経新聞で「トランス脂肪酸」取り過ぎに注意、心臓病を引き起こす恐れの記事が載った。「トランス脂肪酸」とは、マーガリンなどを製造する際に、植物油や魚油など常温では液状の不飽和脂肪酸を水素を添加することにより飽和脂肪酸のように固形化する過程で発生する脂肪酸である。天然の脂肪酸はシス型といわれる複合的な構造をしているがこの水素を添加したものはトランス型として単体的な構造になる。
 この「トランス脂肪酸」は高温で生じやすいため、溶剤抽出法を用いた食用油の製造過程でも発生し(当然使い古しのてんぷら油も同条件となり発生する)、それを原料にし、水素を添加して作るマーガリンやショートニング(味付けの無いマーガリン)ではさらに増え、古い油よりもさらに古い油となる。それをさらに高温で処理(クッキー、クラッカー、パ ン、ケーキを焼く、調理に使う)するなど論外である。
 「トランス脂肪酸」を許容以上摂取すると、細胞膜の中に入り込み細胞、細胞膜の働きを狂わせる。また体内で使われることも無くその排出のために多量のビタミンやミネラルが消費される。さらにコレステロール値も上げる。コレステロールは細胞膜を構成する成分で、大部分は体内で合成され胆汁や性ホルモンなどの原料にもなっている生体成分だが、トランス脂肪酸を摂ると飽和脂肪酸(動物性脂肪酸)以上に血中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を上昇させ、動脈硬化、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)のリスクが増大するとされている。特に摂取エネルギーの概ね2%以上を摂取すると影響が現れるとされている。他にもぜんそく、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎を引き起こす不安があり、認知症への関連もいわれている。
 マーガリンの害が最初に指摘されたのは、西ドイツで、いまだに原因は不明ではあるがマーガリンの発売開始時期と地域とクローン病(腸管壁の細胞が壊れ、本来通過できない分子が侵入するため抗体反応が生じ、そのせいで腸壁に潰瘍ができる)患者の出現時期と地域がたまたま一致したことよりその因果関係が疑われている。このことより、ドイツではトランス型脂肪酸を含むマーガリンの製造は禁止されている。(バターへ変わっている。)フィンランドで1200人を対象にした ソフトマーガリンを多くとった群ととらなかった群を15年間追跡した疫学研究ではマーガリン多摂取群は5年後ではコレステロール 値が低かったが10年後には差がなくなり、むしろ年々多摂取群の死亡率が上昇し、全体で1.4倍、心臓病では2.4倍も高くなった。これより、トランス脂肪酸ゼロのマーガリン「べネコール」が開発され普及している。他にもオランダでは研究結果として精製油に含まれているトランス脂肪が、飽和脂肪酸と同様に悪玉コレステロールといわれる低比重リポ蛋白質を増やし、善玉コレステロールの高比重リポ蛋白質を減らす、と指摘し、トランス脂肪酸を含む油脂製品を販売禁止、デンマークでは2%超のトランス脂肪酸を含むものは販売禁止となっている。またアメリカにおいても食品医薬品局(FDA)が2006年1月より食品中のトランス脂肪酸含有量の表示を義務づけた。カナダも同様な表示義務を導入済み。マクドナルドは使用する油脂を2003年2月までにすべてトランス脂肪酸の少ないものに代えると発表しながらも出来ず期限オーバーを隠していたため訴訟により和解金など計約850万ドル(約9億円)を支払わなければならなかった。今、アメリカではトランスファットフリー(トランス脂肪酸ゼロ)のマーガリンが主流になりつつある。
 一方、日本では厚生労働省の「第6次改訂 日本人の栄養所要量」の中で『「トランス脂肪酸」は、脂肪の水素添加時に生成し、また反芻胃の微生物により合成され吸収されることから、反芻動物の肉や乳脂肪中にも存在する。トランス酸の摂取量が増えると、血漿コレステロール濃度の上昇、HDL-コレステロール濃度の低下など、動脈硬化症の危険性が増加すると報告されている。』との記載があるのみで具体的な示唆は見られない。このようにトランス脂肪酸の害について、日本ではほとんど認知されておらず、トランス脂肪酸含有量の表示義務もないため、全く野放し状態だ。
  前述のマクドナルドでも、日本での調理油切り替えの発表は未だにされておらず。マーガリンメーカーも欧米に比べ摂取量が少ないため問題ないとの見解。トランス脂肪酸ゼロのマーガリンも残念ながら日本ではまだ発売されていない。こうなれば自衛するしかありません。
まず、マーガリンは絶対食べない。お菓子や加工品(クッキー、クラッカー、パ ン、ケーキ、ドーナッツ、コーヒーに入れるフレッシュ、アイスクリーム、レトルトカレーなど)についても原料をチェックする。マヨネーズは取りすぎない。一度使ったてんぷら油は使わない。外食でファーストフードや油物は避ける。
 知るということは大切であるが、また窮屈なものである。私もすでにマーガリンを止めたし、パンやクッキーもほとんど食べていない。(あれだけアンパンとメロンパンが好物だったのに)時々、蒸し饅頭や蒸しパンで紛らしている。それにしても日本は食品に関する危機感は無いのかね、この害は長期間後にしか発生しないためボディブローのように後から利いてくるのにね。早くバターいりアンパンやメロンパンが食べたいな~!