亀田世界チャンピオン2006年08月03日 12:50

 うぅ~ん、どうひいき目で見ても亀田が負けていた。確かに初回のダウンを中盤盛り返していたとは思うが後半のバテバテぶりはどうだろうか、クリンチでようやく逃れるのが精一杯、チャンピオンにあるまじき情けない所作を見せつけた。観衆の大部分が亀田の負けを信じていただろう。それが勝利とは。亀田を応援していた私にも複雑な思いが残った。
 昨日のWBA世界ライトフライ級王座決定戦12回戦で亀田興毅選手とベネズエラのファン・ランダエア選手が戦った。試合は亀田選手が初回のダウンにもかかわらず逆転して2:1の判定で勝利したというもの。
 しかしながら試合全体の流れでは明らかに亀田選手が負けていた。それが微妙な判定ながら勝ったというのは採点法が亀田に有利に働いた(微妙な判定でも各ラウンドイーブンではなくどちらかにポイントを与える方式に変わった。10:9.7が昔は10:10であったが今は10:9となる)かホームでの試合が採点に有利に働いた。(地元判定「ホームタウンデシジョン」といい、これは日本に限らずどこの国でも同じようだが開催国の選手への採点が甘くなる)。
 ボクシングの慣例といってしまえばそれまでであるが、亀田選手にとっては苦い勝利となったはずだ。マスコミやジムがスター性を大事にするあまり試合に対する謙虚さやハングリーさが失われていったのではないだろうか?ジムは日本のチャンプとの試合は組まず、落ち目の世界ランカーとの試合のみ消化させていった。一部の関係者から「温室育ち」「作られたスター」のレッテルも貼られていた。
 この世界戦に先立ちリング外での舌戦が繰り広げられていた。それは6月26日付けの毎日新聞で元WBA世界ライトフライト級王者の具志堅用高氏が共栄ジムや亀田兄弟の言動に苦言を呈したことに始まる。要約すれば「亀田選手の最近の試合は内容が悪く、落ち目の外国ランカーとばかり試合をさせ空位の王座決定戦を金で掴もうとしている、この王座はかって自分が保持していたもので自分の実力が亀田選手と同じだと思われたくない。またパフォーマンスとしてのリング外での相手の挑発行為や弟の試合後の歌唱などは品位が下がるので止めて欲しい、ボクサーの戦場はあくまでリングの上である。またボクサーはあくまでハングリーで負けることを怖れず果敢にチャレンジを繰り返し経験を積んで本物の強さを身につけなければ」と語っている。ただ単に批判しているだけでなくボクサーはリングの上が勝負であって相手を選んでいたり、TVなどマスコミへの露出に力を入れたりがすぎると折角の素質が失われてしまう。さらに亀田は技術面がやや弱いと分析しているが体格・スタミナ・パワー・スター性については非凡なものがあり強くなる要素を持っていると評価しているさらに父に対する尊敬の態度をすばらしいとも評価している。いわば未来の日本ボクシング界を背負って立つ逸材への激励ともとれることばだと思う。これに対して共栄ジムの金平会長や亀田兄弟父・史郎氏は直接であるならばまだしもマスコミを通じて自分の出身ジムを批判するとは許せないと絶縁宣言をしてしまった。金平会長は「事実誤認。世界戦が時期尚早なんて余計なお世話。協会の要職にありながら、お金をかければ世界戦ができるなんて発言はおかしい。同氏は私のおやじが育てた王者。尊敬と敬意、威厳を感じていたが壊れた」。亀田史郎氏は「具志堅氏は器が小さい。協栄の後輩に対する愛情は何もない。13回防衛した王者の言うことではない」とそれぞれ反発。
 結果として亀田選手が勝ったが、具志堅氏の危惧も露見した試合ではなかっただろうか。
 試合後、亀田選手を擁護することばも多々聞かれたが、反対意見も多かったのも気に留めねばなるまい。
 WBCバンタム級元王者・薬師寺保栄さんは「亀田が4~5ポイント負けていたと思う。悪い意味でボクシング界に影響する」と指摘。
 WBCライト級元王者・ガッツ石松さんは「まいったね。なんでこの人が勝ちなの。・・・日本人は立っていれば、チャンピオンになれるの? ・・・・」と首をかしげた。
 日本ボクシング協会長・原田政彦さんは判定が場内に告げられる前に会場を去り、「きょうは何も言うことはないよ」と一言。後で驚いたことだろう。
 亀田人気に恥じぬよう、次回はスッキリとした勝負をしてもらいたい。自分のためにも、日本ボクシング界の存続のためにも。