安倍政権、危険な賭け2006年11月28日 00:08

 自民党復党の条件として中川秀直幹事長は現職議員に限るとしたうえで、郵政民営化など政権公約の順守、安倍晋三首相の所信表明演説への支持、党則の順守の3原則を提示した上に、郵政民営化賛成や昨年の衆院選に無所属で出馬したことへの反省表明を記した誓約書の提出や、国民向けの説明などを求めていた。これに対して造反組・12名は全員復党願いを提出したが平沼赳夫元経済産業相だけが誓約書を「信念を貫きたい。申し訳ない」と述べ、拒否しその復党が危ぶまれている。
 平沼氏の処遇をめぐっては青木幹雄参院議員会長や中川昭一政調会長らが「人情論」で異を唱え、復党実現を求め中川氏の条件提示に強く反発しており、平沼氏の復党願が拒否されれば、党内の亀裂が深まることは必至。 中川幹事長は世論重視から「筋を通す」といっているが平沼氏に限らず復党を容認することは、支持率が低下している安倍政権の運営にも影響しそうだ。
安倍晋三首相は平沼氏と個人的に親しいが世論重視の中川幹事長の意向を尊重して身動きが取れず、金縛り状態で、中川幹事長への一任を強調した。
 また、小泉チュルドレンはこの復党に全面的に反対を表明しており、特に岐阜1区では野田聖子元郵政相と佐藤ゆかり衆院議員の確執が表面化している。「野田氏は郵政民営化に反対して当選した議員、その心変わりを選挙民に説明すべき」との厳しい意見もあり、今後の混乱が予想される。
ところで中川幹事長と平沼氏は昔からの確執がある。簡単に言えば中川氏は森派(安倍派=>三塚派=>森派)の重鎮で森喜朗首相の時、内閣官房長官を務めており愛人問題や右翼幹部との交際、警察情報の漏洩などのスキャンダルで辞任している。
 一方、平沼氏は三塚派の中で亀井静香氏を中心とした派閥内派閥の亀井グループに中川昭一氏らと加わり、総裁選では派閥の総意に沿わず独自総裁候補を担ぐなど造反をしばしば行なっている。
 いわば、二人の確執は森、小泉、安倍と連なる森派と元亀井派の代理戦争かもしれない。平沼氏も亀井氏との関係もあり当面、無所属で行くものと思われる。
 一時的に議席を伸ばしても政党の中の嵐が国民の不信をあおり、政局に不安を残すならば安倍政権の存続は危ぶまれると思うのだが、やれやれ危険な賭けに出たものだ。