サハリン2事業差止め2006年09月22日 11:22

 サハリン2の事業差し止めで事業主体(サハリンエナジー)とロシア側(天然資源監督局・・ロシア政府・ガスプロム?)が対立している。ことのおこりは天然資源監督局が工事の承認取り消しを求めて、天然資源省(プロジェクトの承認をした)を相手取り訴訟を起こしたことに始まる。これを受け天然資源省が21日の裁判を前にして承認の取り消しを決めたものこれにより裁判は中止されるかにみえたが取り消し決定に必要な環境技術原子力監督局長官の署名が得られず発効が出来ないでいる。したがって裁判は10月17日に延期されることとなった。
 天然資源監督局はこのプロジェクトには大きな問題が4つあり、1、プラットホーム(ガス採取塔)付近は絶滅が懸念されるコククジラの生息圏で繁殖に悪影響を与えかねない。2、パイプラインのルート。3、パイプラインが通過する50程度の河川の安全・環境対策がとられていない。4、積み出し施設の建設にともなう残土の処理が適切になされていない。(本来70km沖合いに廃棄するところ近くに廃棄し沿岸の生態系を破壊した。)この内2については改善されたものの他については対策がとられていない、よって事業差し止めを提訴した。当然改善されれば取り下げるというもの。
 一方、エナジー側は部分的な工事差し止めは理解できるが全面的な工事差し止めは理解できない。今まで天然資源監督局とは協力して仕事を進めてきたが今回のようなことは初めてだ他にも理由があるのではないか?今は正式な取り消しの決定を受けていないので工事を続行しているがもし正式に決まれば新たな環境整備計画に一年は必要となり、その間の全体コストは2倍近くになる可能性があるとのべている。
 サハリン2とはサハリン(旧樺太)沖で天然ガスを開発し、液化天然ガス(LNG)として日本などに輸出するプロジェクトで、もともとロイヤル・ダッチ・シェルと三井物産、三菱商事の3社の出資で実行されてきた。これが完成すれば日本の昨年のLNG輸入量の約8%にもなる大口の供給元となる。
 当初はロシア政府が生産分与協定(外国企業が資源保有国の資源開発に参加する形態の一つで事業主体は形式的には資源保有国にあるが、実際の事業管理は投資家が行なう。)を締結し、外貨が主導するプロジェクトであったが、プーチン政府が資源の国家管理の強化の一環としてロシア政府系のガス独占企業ガスプロムの後押しをし、シェルから株式を譲り受ける形で資本参加することとなった。
 もしこれがロシア政府側の不満(ガスプロムが獲得した資本比率が低かった)からきたものだったら、このような事後変更を強要したということでロシアは信頼に足らない国との評価が広まり、今後の外国資本の投下が見送られる可能性が高い。
 ただ、環境保全を前提にしたものであれば勇気ある決断と賞賛されるべきものではあるが、ロシア駐日大使が「サハリン2は予定通り供給する」と説明していることより、ロシア政府側の対応が推測されエナジー側にさらなる妥協を求める手段であったような気がする。
 日本の新石垣島空港のように自然との調和を重視した開発を行なって欲しいものだが。