「量的緩和政策」解除?2006年03月10日 00:02

 昨日、日本銀行(日銀)は約5年間続けた金融の量的緩和政策の解除を決めた。

 本来、平時においては日銀は金融政策として、景気が良いときは加熱を防ぐために金利を引き上げる、景気が悪くなると消費や投資を喚起するために金利を引き下げる施策をとる。金利が下がれば、個人は預金しても利子があまりつかないので物を買うし、企業は借入れ金利が安くなるので設備投資をする。
 しかしながら、日本経済は90年代後半から異常事態に陥った。それは日銀は10年に渡ってゼロ金利に近い施策を行ってきたが、投資や消費の回復もなく不況が持続した。
 そこで、2001年3月19日より金利の代わりに、民間銀行が保持しているお金の「量」を増やすことで、消費や投資を促そうという施策「量的緩和政策」に変えた。
 具体的には導入当時、それまで4兆円だった都市銀行や地方銀行が日銀に対して持っている当座預金の残高を1兆円増やし5兆円にした。銀行はこの日銀の当座預金残高に比例して融資(貸し出し)が出来ることより、市中に出回るお金の量が増えると期待した。その後もこの当座預金残高を積み増し今では30兆~35兆へ膨れ上がっている。日銀は目標量に達するまで銀行に貸し続ける、しかしながら最近では銀行もお金を受け取らなくなったためにこの目標量の達成も困難になってきた。

 今回の解除の条件は「銀行の不良債権問題の解決」と「デフレの収束」。
「銀行の不良債権問題」についてはほぼ終結し昨年4月に「ペイオフ」も解禁された。「デフレ」については全国消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率が4ヶ月連続で0%以上となり、「デフレ」からの脱却にめどが立ったと判断された。

 この後は徐々に正常化させるために、金利をゼロからプラスに戻さなければならない。日銀の福井総裁も記者会見の中で「かなり緩和的な環境で」と述べており必ずしもゼロ金利の維持を示唆していない。

 しかしながら、量的緩和政策はお金の量を増やすことで、直接間接に国債を買い支えるという機能を果たしてきた。今回これが解除された。もし、続いて金融が引き締められると(金利が上げられると)、景気の安定にともない増えるであろう企業の投融資のため、銀行を始めとした金融機関が換金のために国債を手放す。これにより多量の国債が市中に出回り値崩れをおこすと逆に多量の国債を抱えている金融機関にとって大きな含み損となり新たな金融危機を起しかねない。(国債をめぐる金融機関のジレンマ)

 一見正常に戻ったように見える日銀の金融政策も日銀のインフレ抑制のためのゼロ金利脱却方針と政府の国債依存政策と景気回復慎重論および銀行のジレンマの間でゼロ金利解除の時期や「かなり緩和的な環境」の内容が次の焦点であることに間違いない。長期金利が上がれば預金金利も増えるが一方借入れ金利(ローン金利)も増える、お金のない人には痛し痒し、これからも当分みんなで政府や銀行のために我慢しましょう?